第94回アカデミー賞予想②
★主演女優賞
ジェニファー・ハドソン『リスペクト』
レディー・ガガ『House of Gucci』
クリステン・スチュワート『Spencer』
ペネロペ・クルス『Parallel Mothers』
ジェシカ・チャスティン『The Eyes of Tammy Faye』
今回の主演女優賞は演技賞の中で最も予想しやすい部門だ。アレサ・フランクリン本人から指名を受け前評判が高いジェニファー・ハドソン、ダイアナ妃にそっくりだと話題になったクリステン・スチュワート、『アリー スター誕生』の流れで女優として完全に開眼した感のあるレディー・ガガはよほどのことがない限りノミネートから漏れることはあり得ない。またペネロペ・クルスはヴェネツィア映画祭で女優賞を獲得したこともあり可能性は高いと言える。ジェシカ・チャスティンはアカデミー賞には2回、ゴールデングローブ賞には5回のノミネートを誇る名優でありながら未だ無冠、その演技力には折り紙付きで今回もタミー・フェイという実在の人物を物真似メイクで演じていることからノミネートまではいくとみる。
しかしながらジェニファー・ハドソンの『リスペクト』とジェシカ・チャスティンの『The Eyes of Tammy Faye』は作品としては評価があまり伸びておらず、そこが懸念材料ではある。
そこで、では次点として誰が考えられるかというと『Nightmare Alley』のケイト・ブランシェット、『The Lost Daughter』のオリヴィア・コールマン、『ドント・ルック・アップ』のジェニファー・ローレンスはいずれもこの部門を制したことのある女優たち。『CODA』のエミリア・ジョーンズ、『ラストナイト・イン・ソーホー』のアニャ・テイラー・ジョイ、『ウエスト・サイド・ストーリー』のレイチェル・ゼグラーら若手女優たち。『最後の決闘裁判』のジョディ・カマー、『MASS』のマーサ・プリンプトンら中堅女優たち。このあたりが妥当であろう。個人的には役柄の面白さとフレッシュさだとエミリア・ジョーンズ、テレビ女優からの脱却というストーリー性を重視するならジョディ・カマーだと思われるが・・・
★主演男優賞
ブラッドリー・クーパー『Nightmare Alley』
アダム・ドライバー『Annette』
ティモシー・シャラメ『DUNE / デューン 砂の惑星』
ウィル・スミス『king Richard』
ベネディクト・カンバーバッチ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
ここはまだ不確定で全くまだ分からない。ただし大本命とされているのは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のベネディクト・カンバーバッチである。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ・ルイスを彷彿とさせる怪物的演技と絶賛の嵐である。二番手と言えるのは『King Richard』のウィル・スミスだろう。テニス選手であるセリーナとビーナスのウィリアムズ姉妹の父親を演じ賞賛を浴びている。アダム・ドライバーは今現在波に乗っている実力派であり、今回ノミネートされれば3回目となる。『Annette』と『House of Gucci』では主演、『最後の決闘裁判』では助演を務め今年はアダム・ドライバーの年といっても過言ではない。しかしながら主演作が2作ということは票が割れることも考えられる。残り2人は完全に個人的願望である。若手イケメンスターの筆頭格であるティモシー・シャラメ、大好きなデルトロ作品で詐欺師役を演じ『アリー スター誕生』では監督としても抜群の才能をみせたブラッドリー・クーパーである。懸念材料としては前者は『メッセージ』のエイミー・アダムスのようにSF作品での演技はノミネートされにくいこと、後者は役柄的にはどちらかというと受動的な役であり演技の見せ場が少ないかもしれないことがある。
若手でミュージカルの主演で音楽的見せ場があるのは『イン・ザ・ハイツ』のアンソニー・ラモス、『Tick, Tick... Boom!』のアンドリュー・ガーフィールド、『ウエスト・サイド・ストーリー』のアンセル・エルゴードである。アンソニー・ラモスは対象作が興行的にコケてしまったこと、アンセル・エルゴードはスキャンダルの影響があり可能性は低いか。もし化けるとしたらアンドリュー・ガーフィールドかもしれない。
ベテランスター俳優だと『ドント・ルック・アップ』のレオナルド・ディカプリオ、『The Tragedy of Macbeth』のデンゼル・ワシントン、『C'mon C'mon』のホアキン・フェニックスが可能性を残している。いずれもオスカー受賞経験のあるベテラン、対象作の勢い次第では候補入りもあり得る。
中堅ではサンダンスで賞賛された『Jockey』のクリフトン・コリンズ・ジュニア、『A Journal for Jordan』のマイケル・B・ジョーダン、『最後の決闘裁判』のマット・デイモンも捨てがたい。現時点では全く分からない悩ましい部門である。
★助演女優賞
トニ・コレット『Nightmare Alley』
ジュディ・デンチ『Belfast』
ルース・ネッガ『Passing』
マーリー・マトリン『CODA』
キルスティン・ダンスト『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
第93回アカデミー賞のプレゼンターとして登場した『CODA』のマーリー・マトリンは既に主演女優賞を獲得済みであるが、このタイミングでの登場は少なくともアカデミー側は『CODA』での浮上を期待してのものだったはずだ。実際リメイク元の『エール!』でも美味しい役柄であるだけに期待はかかる。対抗馬は『Nightmare Alley』のトニ・コレットとみる。『ヘレディタリー 継承』では批評家賞を独走しながらホラー映画であるためにアカデミー賞からは無視されてしまったという記憶が新しい。今回もオリジナル版では印象的な役柄、ノミネートはあり得ない話ではない。『もう終わりにしよう。』などでの怪演もあり再び存在感を増しており、そろそろ彼女にというアカデミー会員も多いはず。ジュディ・デンチは言わずと知れた名優であるが『キャッツ』『アルテミスと妖精の身代金』と酷評された作品が続き少し可哀想な印象。助演の正統的な祖母役で復権という可能性は高い。キルスティン・ダンストは近年『ドリーム』や『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』など良作への出演が続き、しかもアカデミー賞のノミネート経験がない、となればそろそろ彼女に、と考える会員も多いかもしれない。ルース・ネッガは『ラビング 愛という名のふたり』でテレビ女優からステップアップ、順調なキャリアだがテッサ・トンプソンとの票割れが懸念材料である。
ベテラン勢だと『The Tragedy of Macbeth』のフランシス・マクドーマンド、『ドント・ルック・アップ』のメリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、『Annette』のマリオン・コティヤール、『ディア・エヴァン・ハンセン』のエイミー・アダムスか。この中だと唯一オスカーを手にしていないエイミー・アダムスに可能性はあるだろうか。役柄的にはフランシス・マクドーマンドだと思うが流石に近年とりすぎている感がある。
若手だと『The Lost Daughter』のジェシー・バックリー、ダコタ・ジョンソン、『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボース、『Nightmare Alley』のルーニー・マーラ、『ラストナイト・イン・ソーホー』のトーマサイン・マッケンジーなどがひしめき合っている。この中だと『ワイルド・ローズ』『ジュディ 虹の彼方に』『もう終わりにしよう。』など話題作が続く若き実力派英国女優ジェシー・バックリー、『ジョジョ・ラビット』『オールド』などこちらも話題作が続くトーマサイン・マッケンジーに勢いがあるだろうか。
★助演男優賞
アダム・ドライバー『最後の決闘裁判』
ジェシー・プレモンス『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
ウィレム・デフォー『Nightmare Alley』
リチャード・ジェンキンス『The Humans』
イドリス・エルバ『The Harder They Fall』
ここでも絶対的なコンテンダーはまだいないが、作品パワーからみると『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェシー・プレモンスは可能性が高いように感じる。対抗は『最後の決闘裁判』のアダム・ドライバーか。こうなると主演とのWノミネートになるが今の勢いを鑑みるとその可能性は十分にある。無冠の名優ウィレム・デフォーはいつも通り怪しい役柄で本領発揮か。演技の見せ場があるかどうかが鍵になってくる。これだけの長いキャリアで未だ無冠なのはそろそろおかしいとアカデミー会員も思っているはず。ベテラン俳優リチャード・ジェンキンスも無冠の名優の一人。『扉をたたく人』『シェイプ・オブ・ウォーター』と後補になりながら受賞は逃してきた。この部門は老人に優しい傾向があるため可能性はある。ただし『Nightmare Alley』にも出演しており票割れが起こるかもしれない。次期007とも目されるイドリス・エルバは異色西部劇で悪役を演じるとあって見せ場もありそう。大作ばかりのキャリアではあるがそろそろオスカー後補になってもおかしくない。
ベテラン勢では『House of Gucci』のアル・パチーノ、『ドント・ルック・アップ』のマーク・ライランス、『リスペクト』のフォレスト・ウィテカーあたりだろうか。いずれもオスカー受賞経験のあるベテラン勢だが、作品の勢い次第では浮上もあり得るだろう。
そのほかでは『Licorice Pizza』のブラッドリー・クーパー、『Zola』のコールマン・ドミンゴ、『House of Gucci』のジャレッド・レトなどが様子を窺っている。特にコールマン・ドミンゴは『マ・レイニーのブラックボトム』の演技も記憶に新しく、サンダンスで絶賛された勢いもありダークホースとなり得るか。